命は奇跡

 先日、男の子が我が家にやって来た。 

 その名前の通り、とても賢い。

まだおむつをしているのに、もう、たくさんのひらがなを読むことができる。

 果物の名前を英語で言える。リンゴをappleと発音する。イチゴをstrawberryと発音できる。

 苺をあげようとして、洗ったまま、へたを取らずにお皿に並べて出した。家人は へたは取ってあげないと と言った。

私は えっ、取れるでしょ と言った。

 男の子は可愛いお手てで、器用にへたをとり、ぱくぱく食べた。ママにもあげて と言ったらあげる。パパにもあげてと言うとあげた。

そう、こう、しているうち、感極まって来て男の子は、ママと私の間を思いきり走って、行ったり来たりを繰り返すようになった。私は、腕を広げて精いっぱい、彼を抱きとめる。大変なのだが、とても楽しい。みんながとても楽しい。

 確かに、この子は、この世界にかつて存在していなかった。

ところが、今現在、この子は、一つの命として在る。不思議。

 生命が誕生するということは、奇跡なのだ。 故に、命は大切なものなのだ。掛け替えのないものなのだ。

 そして、この自分も命なのだ と思い知る。

 誰もが生まれてきて、その命を、限りある命を燃やすのだ。