退院はしたい。

けれども、退院して又元の生活に戻ることを想像すると辛かった。

 入院する前、躁転した頃行った、自分が人より少し偉くなったような気分になって、とってしまった過去の取り消すことのできない数々の恥ずかしい行動はどうすればいいのか?

例えばこんな事柄である。

バス停で待っている見知らぬ人から話しかけられ、どんどん会話をやり取りした。

ジェラートのお店では、近くの席に座っている見知らぬ人にこちらから気軽な感じで話しかけ、会話をし続けた。

バレンタインデーに、動物病院の先生にチョコレートを届けに行った。先生を動物たちの守り神に例えて文章を書いて。手編みのコットンのお花をいくつも飾った袋に入れて。猫の体調のことを話してから、(先生に奥様はいらっしゃるのですか?)と訊いた。恥ずかしい。猫のために行かなければならないこの病院に行けなくなった。

行く先々で帰りには花屋に寄り、持ちきれんばかりに花の苗を購入した。家のベランダはすごい数の苗であふれんばかりになった。

 退院はしたい。

 家に帰るしか、仕方がなかった。

退院してからは、鬱と強い不安との闘いだった。少し楽な時が来て、その後又ずうっと鬱で、ここ最近抗うつ剤が一錠足され楽かな?という感じである。

鬱の世界って辛い。

自己嫌悪。自己肯定感の無い世界。

夜の眠りから覚めた時の悲しみ。朝が亦やって来たと思う日々。

 春まで通っていたクリニックの先生は私に診断名を告げて、これ(躁鬱病)は治りませんよ,障害者手帳を何で取らなかったの?と言った。

双極性障害という病気は、完治ではなく寛解を目標とする、慢性の脳の病気なのである。

 退院後も同じ病院の外来に通っている。